レベル・ラヴ
 この寮の裏手には山があり、そこで湧き上がった温泉が川に合流して流れている。
 その一部が寮の3階にある入浴場に引かれているらしい。
 そこからあふれたお湯はその真下に作られた水溜りに流れ、そこからさらに川へと合流するように作られている。

 大抵の騎士達はここで練習の汚れを軽く洗い流し、少しでも寮にいるメス達にアピールするのだ。
 春の着ているこの時期は正面通りで窓越しにメス達と話をしている。

 オレはここに流れているお湯が彼女達の湯船の湯だったのかと思うとなんとなくなまめかしく感じ、使うことはなかった。
 しかし、この時期は彼女達もオスへのアピールでこの時間で入浴するものはいないだろう。

 袖をまくり、今日の練習で付けられた傷を出す。
 すでに固まりかけている血も、お湯で洗えば傷口の血は綺麗に流れる。

 何度か傷口をゆすいでいると、上に人の気配を感じ顔を上げれば、入浴場からエレーナがこちらを覗いていたのだ。
 エレーナは視線が合うと、驚いたように引っ込んでしまった。

 オスとの出会いの場所である正面には行かず、ここでゆっくりと入浴していたのだろう。
 まだ発情期は来ていないのであれば、おかしな話じゃない。

 また顔を覗かせるのではないかとしばらく待っていると、エレーナはひょっこりと顔を覗かせてくれた。
 
 入浴していたのか、髪が濡れている。
 そのことがオレの鼓動を早めた。

 愛らしい顔に、見えない体は何もつけてないに違いない。
 そのことが気持ちを煽る。

 彼女以外に愛せない。
 いい血統も、副団長としての立場も、彼女とは比べ物にならない。
 無理にエレーナを手に入れれば、一番欲しいモノが手にはいらないことはわかりきっている。

 それでも彼女が欲しかった。
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