レベル・ラヴ
 ポケットから紋章の入ったハンカチを取り出す。

「エレーナ?」

 彼女を呼ぶと、素直な彼女はきちんと返事をする。

 これから自分がどんなに卑怯なことをするかわかっていながらそれをやめようとは思わなかった。
 そのことを一生恥じるとわかっていても、彼女がいてくれればいい。
 その時はそう思っていたのだ。

 自分のハンカチをぐしゃりとつぶし、それを彼女に見せる。

「その・・・上からこれが流れてきたのだが・・・」

 彼女が自分達の何かと勘違いすることはわかっていた。
 予想通り彼女は驚いた顔をしてすぐに引っ込んだ。

 そして、しばらくすると少し恥ずかしそうな顔をまた覗かせた。

「私のではありませんでした!」
「いや・・・そうではなくて・・・」

 自分の物と勘違いしたのだろう。
 オレは彼女にそこから出て、自分のそばに来て欲しかったのだ。
 寮は男子禁止の場所。
 例え王であっても、ここに踏み入ることは許されない。

 この時期は発情したオスから身を守る砦でもあるのだ。

 彼女がそこにいる限り、触れることも叶わない。
 それでは困るのだ。

「・・・すまないが、引き取ってくれないか?」
「い、今着替えて下に降ります!」

 さらに言ってみると、彼女は何かに気づいたような表情を浮かべた。

「では、この真下に下りてきてくれ」
「はい! では、少し待っててもらえますか?」
「・・・ああ」

 彼女が降りてくるとわかってほっとする。
 愛してもいない男から気持ちを押し付けられ、無理やり妻とさせられる彼女は不幸だろう。
 だからこそ、彼女には自分のすべてをもって一生償うつもりだ。
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