〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 なんで今反応できたのか不思議に思いながらも、南良能にボールを蹴る。

 声出した覚えはない。

 準備した覚えはない。

 っとなると反射で取ったとしか思えない。

 本当はこんなことはいけない。

 本当にそうなのか?

 頭の中にある記憶を探しても、珠理が求めている記憶は見つからない。

 はっ!

 速攻だ。


 白のユニフォームがどんどん迫ってくる。

 あかりと梗子が、なぜか目の前にいない。だが、チームが攻めるゴール近くから一生懸命走っている。

 南良能と絆の戻りが、味方で一番早い。

 だが、まだ敵の方が珠理に近い。


――いつ出ようか。――

 こういう時、いつ、ボール持っている相手と一対一をするか、判断しづらい。

 前は、迷わずに相手の方へ、ゴールより遠い位置へ出ていった。

 でも、それが原因で失点したり、監督やゴールキーパーコーチに怒られたことがある。



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