〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 剛溜は一歩後ろに下がる。
 源希が近づいてきたから。恐ろしく見えたから。

「お前のこと嫌いだ。嫌いだ、大っ嫌いだ!!!」

 剛溜の腰を蹴った。

「ちょっ、ちょっと!!」

 剛溜なりに悲鳴を上げ、蹴られたところを手で押さえる。

 かなり痛そうな顔してる。

「なにするのよ!」

 唯が剛溜のもとに駆けつける。

「あっ。待って。」

 珠理も遅れて駆けつける。


 唯が剛溜のもとにたどり着くとすぐ、

「お前の守備が甘かったから、こうなったんだよ!」

 源希は唯の肩を強く押した。

 バランスを崩しかけながら後ろに下がっている唯を、あとから来た珠理が支える。

「唯。」
「大丈夫。」

 はっ。

 珠理は恐ろしくなってきた。

 目の前で大事な弟を蹴り、大事な友達を押した。

 そんな人が目の前にいる。

 次は、自分がやられるんじゃないかと思うと恐ろしい。
 それと同時に、あんなに優しかった源希が、暴力を振ったところを見て、ショックを受けている。





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