〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 本当は怯えたい。でも、剛溜と唯に暴力を振った源希が許せない。

 言いたいことがあって、でも言ったら同じ目に遭う。
 口の中で言葉に溜まる。必死に飲み込もうとして、唇が震える。
 だけど、もう、限界。

「レッドカードだよ。
 人として最低!」

 はっ、言ってしまった。
 これは、源希の怒りを買う。

 そう思った。

 しかしこの一言で、源希は自分のしたことをやっと理解した。


「ごめん。」

 とても小さい声で言った。

 心底謝っているのか分からない。

「もういいよ。」
「うん。」

 唯と目を合わせ、手をそっと離した。
 珠理はやっと剛溜のもとに駆けつけられた。

「大丈夫。」
「ああ。」

 このまま遊ぶのはもう無理だ。

「帰ろう。唯も。」

 珠理は言うしかなかった。

 剛溜と唯はうなずいて、家へ帰った。

 源希残して。


 
 その後、剛溜にケガはなかった。

 しかし、もう二度と源希と遊ぶことは無いようにすることに決めた。

 あの日を境に、珠理と源希はしゃべることがなくなった。


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