〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 しょうがない、こうするか。
 珠理は腹をくくる。口の中にある唾をすべて飲み込む。

「ごめん、帰るから。」

 剛溜はボールを拾う姉の姿を見て、慌てて帰り支度をする。

「おい!」

 姉弟の動きが一時停止。

 
――だめか。――

 さて、どう出る?
 源希次第かもしれない。

「俺な、剛溜と対決したいんだよ。」
「えっ?」

 珠理は源希の顔に目線を合わせる。

「まあ、大事な弟は傷つけないのでご安心を。」

 こわばっていた顔が、急にゆるんだ気がする。
 妙に珠理に対して優しいような・・・。

 そして、源希は剛溜の顔に目線を合わせ、

「剛溜。勝負を受ける気か?」

 剛溜は一瞬考える。

 言葉の言い方から、本気度や本心を調べる。


 相手は、一度自分を怪我させようとした人だ。
 今、怪我したら大変なことになる。

 でも、


――やるか。
   お姉ちゃんじゃ、無理なところあるし。――


 
< 175 / 213 >

この作品をシェア

pagetop