〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 源希がボールを前へ蹴った。

 剛溜は動じない。

 華麗にボールを動かす。
 源希は足が器用だったっと思い出す。バンバンFCでは華麗なテクニックを駆使して、ゴールを量産していた。

 剛溜は、源希の目を奪われるような足さばきにも動じない。

 守っているが、虎視眈々とボールを奪う機会を覗う。

 源希も虎視眈々と抜かす機会を覗っている。

 前へ進んだり、後ろへ下がったりと、一進一退の攻防が続く。


 珠理は最初、源希がわざと足を引っ掛けたりして、剛溜が怪我するのではないかと思った。

 けど、源希が言った通り、剛溜を怪我させなさそうな予感がする。


――待てよ、油断大敵。安心できないよ。

 わざとではないけど、怪我することもある。

 慎重に、慎重に見守らなきゃ。――

 剛溜が怪我しないか心配しすぎて、手が震える。

 震えている間に、源希が後ろに下がる。剛溜が少し詰める。


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