〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 
「はい、今日は、教科書三十五ページ。」

 源希のことを思っていたら、いつの間にか授業が始まっていた。
  
 珠理は我に返り、慌てて教科書とノートを開いた。

 シャーペンを握って、授業を受ける体制が整った。

 しかし、手が動かない。


「ええ、前回までは・・・。」

 どんどん眠気が襲ってくる。

 先生の声と、練習の疲れと、お昼が・・・。

 珠理は数学嫌いではない。むしろ好きなほう。けしてつまんないからじゃない。

 ああ、眠い、眠い、眠い・・・。

 寝たらもったいないから、頑張って起きようとする。眠気を飛ばそうとする。

 目尻の横を押して、ぎゅうっと強く押して。
 深呼吸して。

 それでもダメ。

 眠くて、眠くて仕方ない。


 瞼が重く感じる。


 
――ああ、もう眠ってしまう!――

 懸命に、眠気を吹き飛ばそうとする。

 でも、でも、でも―――

  



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