〔完〕 うち、なでしこになるんだから
「じゃあいくよ。」
 
 珠理は一歩下がってから、ボールを蹴った。

 源希と剛溜が追いかける。

 珠理がボールを一蹴り。源希と剛溜を置き去り。

 剛溜は途中であきらめた。珠理と源希は、それに気づかず、勝負を続けてる。


 二・三歩走って、また蹴る。

 源希が追いかけてきた。
 このままではボールが取られる。慌てて一蹴り。あっ、思ったより強く蹴ってしまった。

 珠理はさっきより速く走る。源希も負けじと走る。

 珠理が先にボールに追いついた。ここからならいけるかも。

 三メートルぐらい離れたところからシュート。


 線で描いたゴールに入ってくれるか。

「入れ!」

 今の珠理だったら絶対こんなこと言わない。

 でも、小さい時の珠理は、こんなことを言ったかもしれない。

 あっ。


「やったー。入った。」

 珠理の父親のもとへ走り、ハイタッチ。

 顔は珠理には見えないが、体中に嬉さがこみあげてくる。


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