〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 次は何をやるのだろうか。多分、この時期だと紅白戦ではないかと珠理は思う。


――あっ、とにかく皆に伝えないと。――

 珠理は慌てて戻り、ゆう乃たちに、さっき監督に言われたことを伝えた。


 そのあと、珠理は水を飲みにロッカーまで戻った。

 ロッカールームの窓から景色を見ると、外は真っ暗。細かい雨が降っている。
 

――こんな中、紅白戦をやるの。――

 そう思うと、寒気がしてきた。
 
 サッカーはよほどなことがなければ、雨の中試合をすることもある。
 その時を想定して、雨の中紅白戦するときもある。

 雨の中、傘をささず、ほとんど動かずにいる。寒くて、寒くて仕方ない。

 気分が、空と同じように暗くなる。


「昼間よりは降ってないか。」

 後ろから絆の声が。

「あっ。」

 やっと我に返った。って、絆がここにいることは。

「次、外で紅白戦だって。」
「雨の中紅白戦ですゕ。」

 最後の一文字だけ急に声が小さくなった。

「そうだよ。」


――あーあ、予想が当たった。――





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