〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 サッカー場に着いた。

 芝はもちろん、ひさしの下のベンチの座面まで濡れている。

 監督は座面を吹き、レインコートのフードをかぶって座った。


 一方選手たちは、空気がたくさん入っているボールを選び、センターサークルの中心に置く。

 白チームのうち、満とリエがセンターサークルに入った。
 それ以外の人は入れない。
 そして監督の笛の合図で満が前へ蹴って、キックオフ、紅白戦第一戦が始まった。


 珠理は全員同じチームメートなのに、敵は初めて対戦するように感じる。

 暗くなってライトがついているが、昼間に感じる。
 公式戦と同じように感じる。


 開始早々、赤チームの爽がリエからボールを奪った。

 爽はすぐに来未にパスして、赤チームが攻めるゴールへ走った。

 細かいパス回しで徐々に赤チームが攻め上がる。

 ゴールから比較的遠いところで、来未とすみれと南良能がパス交換している。
 ゴールに近いところに人が密集しているから。
 とりあえずパスを回して、隙を見つけたい赤チーム。
 とりあえずパスを回させて、隙を見つけて奪って、速攻に持ち込みたい白チーム。


 
 
 
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