〔完〕 うち、なでしこになるんだから
 春世が笑いをこらえていることに、気にしてる暇はない。

 水筒のお茶を飲み、手をタオルで拭いてから、ゴールキーパーグローブをはめる。

 グローブが手になじんだ瞬間、さっきの失敗を忘れていた。

 ただ単に、長身だからセンターバックをやっていた。

 不慣れなポジションだから、ありえない失敗をした。チームに迷惑をかけた。
 でも、もう忘れた。目の前の戦いに集中する。

 それだけだ。


 ピィ~♪

 紅白戦第二戦後半が始まった。

 今は珠理の白チームが試合を握っている。
 あまり珠理の出番がなさそうに思える。そう思ったらだめ。ふとした隙に速攻しかけられるからね。


――これの時は、これ。――

 いろんなシュートイメージをし、どう止めるかをイメージする。

 いつでもシュート受けていいような準備をする。


 バンバンFCの時に言われた。

「シュート来そうなときに、始めて準備するな。
 いつでも準備してろ。」

 言われた当初は意味が分からなかった。

 でも、今はわかる。
 不意にシュート打たれて、失点したことがあるから。

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