Wild Rock


 長い金糸の髪。空のような大きな碧い瞳。

 大空が実体化したような感じだ。

「五月蝿い男だねぇ…」

「へ?」

 マヌケ面で首を傾げる少年。

「訳の解らない古代の言葉で頭ン中でしゃべられたら、うぜえっての」

「しゃべるって…だって、俺何も言ってないよ…」

 鳩が豆鉄砲くらったような顔で言う少年に、少女は舌打ちしながら格子に手を伸ばした。

「紫の髪に紫暗の瞳。こいつが伝承の高位魔族。ついでに銀の首輪の制御装置ときたか…。置いて帰っても、またわからない言葉でムカつくだけだろうし、出してやろうか?」

「え? 出して…くれるの?」

 少女が手を差し延べると、ユリの刻印の指輪が光りを放ち、鉄の牢獄は土くれのように朽ち果てた。

 久々に垣間見る全体の大空。

 しかし気が付くと、少女は一人階段を下りて行っていた。

「待って! 名前、何て言うの!?」

「マリア。マリア=サムシエル」

 視線だけを少年に向け、ポソリと呟くように言うと、少年は満面の笑み。

「マリア…へへっ。俺ね、俺ね、ルーシュ=エル!」


 今は昔。

 二人の出会いの幕開けだった。


 
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