Wild Rock

 部屋の中だと言うのに、穏やかな空の下にいるような、自由そのものが目の前にあるような感じに捕われた。

「まったく。厄介者だなてめぇは…」

 シスターなのに、口が悪いわ…。

「ディモス…いや、ファブニル。主がお前の行く末は、死して我が元へと、あたしは命をうけだが…」

 アタシは苦い顔で覚悟を決めた。
 このシスターは、かの有名なオルレアンの聖女だと見て分かっていたからだ。

「覚悟はできてます。どうぞ、殺してください…」

「バカかてめぇは」

「ばっ、えぇ?」

 人の覚悟を打ち消す言葉に、アタシはとんでもなくマヌケな声を出してしまった。

「あたしがあんなジジイの言う事すんなり聞くかよ。お前はあたしの下僕として、あたしのためだけに動け。答えはYesの一言のみ。言い訳は聞かん。わかったか?」

 間髪入れさせることなく言われ、おどおどしていると、紫の髪の少年がコソッと耳打ちをしてきた。

「言うこと聞いといた方がいいぞ。マリア怒るとムチ使っちゃうから」

 仮にも聖女がムチを使うなんてと思ったけど、今となっては慣れちゃったわね。

 でも、アタシがしてきた罪は、とても苦しい傷跡として残ってしまった。

 
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