Wild Rock

 奇怪な声をあげながら、サタナキアは…いや、バフォメットは腕をアタシの腹から抜き、アタシは地へと力無く倒れた。

「……右手に…闇…左手に…静寂…我が前方に悪…後方には死を……時の彼方に封じられし…デイモンズ・ゲートよ…テトラグラマトンの名において…開け放てええっ…!」

 魔族へと体が変貌していく前に、奴を魔界へと還さなければ、アタシまで嫌悪する魔界へと誘われてしまう。

 床には巨大なデイモンズ・ゲートが現れ、勢いよく開いたと思うと、バフォメットは吸い寄せられるかのようにゲートの中へと誘われた。

 音も無くゲートは消え失せ、静寂に取り残されたアタシ。


 あぁ…憎い魔族の仲間になるなんて…。

 ただ姉さんの仇をとりたかっただけなのに…。

 自分で自分を殺すことも許されない体になってしまうなんて…。

 涙を流しながら、アタシは目を閉じた。







 ふと目を開ければ、紫の髪の少年がアタシの顔を覗き込んでいた。

「あ! 目ェさましたよマリア!」

 耳元で叫ばれ、ちょっと耳が痛かった。
 ヒールの音と、タバコの匂いが近寄って来る。

「!?」

 アタシは目を疑った。
 金糸の美しい髪で空を思わす碧眼。

 
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