Wild Rock

 マリアが廊下へ出ると、目をこすりながらルーシュが隣の部屋から出てきた。

「んあ? マリアどこいくんだ?」

「下だ」

「俺も行くぞぅ。マリア一人じゃ危ねぇもん!」

 まだ起ききっていない頭と体でガッツポーズをするが、よたついて頭を壁にぶつけてしまった。
 マリアはそんなルーシュを見てため息をつき、返事もせずに階段を下りて行った。

 フロントの男からタバコを貰い、ルーシュは横にある長椅子に座って足をプラプラさせている。

「なーマリア。何かファブニル元気なかったけど、どっか悪いのか?」

「なぜ、そう思った?」

 ルーシュの隣に座り、タバコに火を点ける。

「んー。なんかいつもの優しい笑顔じゃないっつーか、空気が違うっつーか、よくわかんね」

 自分からふっておきながら困惑気味な顔をする。

「フゥ…。野生のカンか…」

「え?」

「いや。ルーシュ、一つ覚えておけ。いつも笑顔の人間が、本当に幸せな人生を送ってきたと思わないことだ。その裏では、どんな苛酷なことがあったかわからないからな…」

 ルーシュはまた困惑気味な顔を見せた。

「何それ?」

「わからなければ構わん。行くぞ」

 タバコをポケットにしまい、部屋へと歩き出すマリア。
 ルーシュは頭にハテナマークを散りばめて、マリアの後についていった。

 
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