牙龍−元姫−
「――…ッたく。どいつもこいつもうるせえやつばっかだぜ」
大概輝君も喧しいよ、と思ったけど口に出すことはなかった。
輝君は人のこと言えないくらい騒がしい人だと思う。良い意味でも悪い意味でも。
はぁーっと息を吐き“やれやれ”と言うように大人ぶる。
だけど、手に持つ板チョコを見る限り輝君は輝君だと思った。
「……あれ?輝君?何それ?」
…突如ジーンズのポケットから取り出して何かを弄る。
「んぁ?俺の癒しだ」
「癒し?」
「ああ。王冠だ」
王冠?どういう意味だろう?と頭を捻る。
「王冠っつーのは瓶ビールとかの口金のことだ」
「蓋とか栓のこと?」
「おう。要するに…………見ろ。この金属製の蓋をひっくり返した形が王冠に似てるだろ?」
「あ、ホントだ!」
「だから瓶の金属製キャップの事を王冠って呼ぶんだよ」
「へぇ〜」
輝君が手に持っているものは市販でもよく見かけるものだった。
それは瓶ビールにもよくある蓋。すぐ手に入る蓋を輝君は癒しだと言う。それにやけに詳しいと疑惑を抱いた。
「あら。輝ってばコレクターだったの?そんなガラクタを集めてるなんてヤボなことするのね〜」
話を聞いていたのか割って入ってきた里桜はバカにするかのように言う。
「バカ野郎!これをバカにすんじゃねぇよ!なかなか手に入らねえ代物なんだぞ!?」
「そんな高いモノの蓋なの?」
「……さあ?知らねえ」
「知らないってアンタ、」
里桜が呆れるのも無理はないと思う。
自分が価値のあるモノだと値踏みしておきながら、何の蓋なのかを理解していない。
仮にもコレクターなのに。