牙龍−元姫−







「野々宮、お前にはこの価値が分かるだろ?」

「え…っ」

「ふざけた事言わないでよ!響子にそんな趣味ないわ!」

「あはー。ここは里桜ちゃんに賛成ー。響子ちゃんを変な世界に引き釣り込まないでくれないかなー?」





瞬時にバイクを降りた緑川君に手を引かれて背後に隠された。



今更だけどこの場から動く気配が3人には見えない。バイクに乗ろうとして大分時間が経っている。





「いや。野々宮なら分かると信じている!」

「分からないわよ!」

「分かるっつってんだろ!なぜなら俺のライバルだからだ!」





思わずライバルという言葉に怯んでしまう。



輝君の瞳は力強く、ボケている訳じゃないんだと納得する。



あの頃に出逢っていればそうなのかもしれないけど、今は無関係。ライバルと呼ばれるのは筋違い。



――――不愉快だ!と眉根を寄せている里桜はマジ切れ寸前で少しヤバいムードになってきた。



しかし空気が読めないのは輝君の十八番。キラキラと瞳を耀かせて珍しく満面の笑みで私の掌に王冠とやらを乗せてきた。





「ほら、やるよ。お近づきの印だ。大事にしろよ?」





ぐッ!と親指を立てるとそれはもう不気味なくらい素晴らしい笑顔を見せてくれた。



呆然と突っ立ちコレをどうしようかと悩んでいた、そのとき。



プツン――――‥。



と何かが切れた音がした。



大方予測はしていたからビックリする事はなかった。



緑川君と目が合い2人同時に目を伏せる。やってしまった、と。





「―――ッいい加減にしろよ!!このKY男!!!」





里桜がキレた。





「ってめ、何すんだ!」

「はああああああ?KYに言われたくないわね。噂を知らないとは言わせないわよ。知っていながら過去をゴチャゴチャ掘り返すなんて聞いて鬱陶しいのよ!」





キレた瞬間わたしの掌にあったコレクションを投げ飛ばした里桜。



雑に扱われた愛しのコレクションを見て輝君は驚愕し里桜を睨む。



雲行きが怪しくなる。



この2人の対峙を見るのは今日で何度目かだけど、今はお互い本気でピリピリしていた。
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