牙龍−元姫−



痛む舌から止めどなく流れる血の味に、荒れた心が落ち着きを取り戻す。



似ている?私とアンタが?



…似ても似つかないわよ。



アンタ達は急に現れて私から響子を奪って、最終的に傷ついた響子を捨てた。



私は響子を守ろうとしたわ。なのに何なのよこの有り様は。捨てられたはずの響子がまたアイツ等に奪われる。



根本的に私とアンタ達は、違う。



奪う側のアンタ達と奪われる側のワタシ。



奪われた方の身にもなれ。頭も心も、全てが空っぽになるくらいの喪失感なんて――――私にしか、分からない。



きっといまの私は、脅えている。“また”響子が私から離れていくんじゃないかと脅えている。



前もそうだった、でも今回は尚更そう思っている。
そう、思わされてしまう。



それはアイツ等の響子への執着心が只者ではないと感じているから。




いつか…
響子が私の事を必要としない日が来るんじゃないかと…
心の何処で脅えている。



それを“涙”が肯定する。



泣いてはいない



だけど。
泣いていたらしい。
心が。










あの日、あの夜。真菜美のバイト先【らぶりん】から帰る際に私は早苗の家に立ち寄った。



そのとき何故か早苗に色々と心情を打ち明けてしまった。あの子は誘導尋問が上手い。



少しだけ、楽になったけど。



何か言ったのかは、言った私でさえ覚えていない。募りに募り、溜まっていたモノが爆発したように叫んでいた事は記憶はある。



だけどそれを全て汲んだ上でアイツは私と“似ている”と言ったんだ。





「……っ」





遣り切れない思いに、歯軋りする音が鮮明に聞こえる。
< 685 / 776 >

この作品をシェア

pagetop