牙龍−元姫−
「――チッ」
私から目を逸らすと、相当の苛立ちに舌打ち。
ポケットに手を突っ込んで歩き出す。
「響子の所に行くの?」
「テメエには関係ねえ」
「ええ、そうね。私には関係ないわよ?」
だけど…そう言い掛けて止める。足を止めた金髪は振り返ることはせず耳だけを傾ける。
その後ろ姿に目を細めて、低めの声を出した。
これは
あくまで、忠告。
「響子を、傷つけんじゃないわよ」
―――――それに返答はなかった。
再び歩き出し遠ざかっていく背中。金色が小さくなっていく。
「返事ぐらい、しなさいよ」
誰に言うわけでもなく小さく呟いた。
傷つけない自信はない、と言う事かしら?
なら今の状態で会いに行こうとしないで欲しいわね。
今すぐにでも会いたい気持ちが抑えきれないと言うなら、せめて苛立ちを鎮めてから行け。
心底怒鳴りたくなった。
本当に何かしたら只じゃ済まさないから。
例え“何か”あっても響子は何も言わないから心配なの。だから加賀谷に忠告せざるを得ない。
本当、むしゃくしゃする。
何が“楽しい神無際”よ。ただ苛々するだけじゃない。
――――今日何度目かのしつこく掛かってくる電話。
ポケットに入れた携帯が小刻みに震えている。
それに更に私の苛立ちは粉雪のように降り募る。
『悩みばっかりじゃねえか』
あながち間違ってはいない言葉。
図星、だった。
だけど、アンタ達が居なければ私の悩みは少なくて済んでるのよ。
もう見えない背中にそう吐き捨てた。
気が進まないが、
流暢に流れる流行りの音楽を聞きながら校門へと、重い足を進めた。