牙龍−元姫−

亡き壊れた十字架







みーんみんみん。



ナゼか頭のなかでは蝉の鳴き声が響いている。
でも本当に今にでも蝉が鳴きそうな暑さ。



ジリジリ。
陽が肌を焦がす。



ミンミン。
五月蝿い蝉が鳴く。










木陰のベンチに座りボーッとする。
蛙の気持ち悪さと干からびるような暑さのダブルパンチで精神的にも体力的にも限界に近い。











何故か里桜も居ない。さっきまで戒吏が傍に居た。だけど何らかの出場を拒否したためアナウンスで呼び出され鬼のような形相で此処から離れて行った。



その戒吏の形相を見た人は悲鳴を上げ、直ぐさま目を逸らしていた。




「――――暑い」





元々陽射しが苦手な私には、この状況が少しキツい。



一応日焼け止めは塗っているけど明日になればきっと肌は赤くなっていると思う。



―…もう、帰ろうかな?



よく分からない終わり方だったけど両生類の競技には出たし大丈夫だよね?



何てベンチに座りながらボンヤリ考えていると影が掛かる。





「の、野々宮さん」

「え?」





ふと呼ばれた名前に項垂れていた顔を上げる。
暑さのせいで首を動かすことさえ怠い。
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