獣は禁断の果実を蝕むのか。
「小松には、もうひとつ謝らなければいけない。」
初めて専務に苗字を呼ばれてドキッとしたのは一瞬。
「何かありました?」
私が謝らなきゃいけないことはいっぱいありそうだけど、専務に謝られることなんて記憶にない。
「オレは勘違いをしていたよ。小松はてっきり、今までの女を前面に使う能無しの秘書と同じと思ったが、勘違いだった。」
「どういうことですか?」
「普通なら、あの状況で泣いたり、わめくのが当たり前。小松は泣かなかっただけじゃない、自分から辞めると仕事を放棄しなかったことを凄いと思った。」
「それは。」
スパイのため。
それと…バカにされたくない悔しさって…言えない。