獣は禁断の果実を蝕むのか。

「ここは、社長や重役達が極秘事項などを話す時に使う。3軒先の居酒屋は、大守産業の重役、その斜め向かいがキャシピタル工業。」


次々に、専務の口から出てくる大手企業の名前と居酒屋の名前。


サラリーマンの大きな笑い声にかき消されかけているその声を、必死に聞き取ってメモした。


…もしかしたら、デジウェアもここで話しているのかも。


これはいい収穫。


皆瀬さんに、これも報告。


その間に用意された生中のビール。


「さて、ここからはプライベートだ。」


そう言いながら、専務がジョッキを持った。


「はい。」


ニッコリと返事をすると、私も手にジョッキを持ったけど。


やっぱり専務には、ビールジョッキよりワイングラスかシャンパングラスが似合う。


さすがに言えないから、ギュッと心にしまい込んで、このレアな状況に心が弾む。


「すまなかったな。お疲れ様。」


初めて見た。


専務の優しく笑った顔。


それが嬉しくて。


キュンっと胸にこみ上げてくるものがある。
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