獣は禁断の果実を蝕むのか。
慌てて九重部長の助手席に乗り込んだ。
さっきの獣に捕らわれた瞬間から、鼓動は鳴り止まなくて。
何を会話したらいいのかも分からなくて。
ただ、うつむいてひざの上に置いた手をギュッと握りしめていた。
「まさか、本当に沙菜ちゃんが来るとはね。」
ポツリと九重部長がつぶやいた。
「え!?どういうことですか?」
フッと顔を上げて、信号待ちしながら私の顔を見る九重部長の顔を見た。
「沙菜ちゃんみたいなタイプ、そういうキャラには見えないから。」
「それは…」
デジウェアのためだけど。
そんなことは言えない。
「オレのこと、好きになった?」
ほほ笑んだ顔。
だけど瞳の奥は獣のまま。
「違います。私は…専務のお仕事、少しでもお役にたちたいと思って。」
なるべく瞳の奥は見ないように、適当にごまかした。