獣は禁断の果実を蝕むのか。
「慣れてるのは事実だけど。つまんないね。」
「どうしてですか?」
「梓悸のことばっかり。」
「それは、秘書として当たり前の事です。」
その先のデジウェア以外、見ているところはない。
「優秀だねぇ。」
イヤミたっぷりに答えた。
「分かったら、早くデジウェアの事を教えてください。」
「早く知りたいなら、オレだけ見るって約束しろ。」
九重部長の瞳の奥に獣が姿を現した。
そんな簡単なこと。
約束なんて口だけでいいはずなのに。
まるで、チャックでも閉められたかのように、口が開かない。
「…」
黙ったままうつむく私。
簡単なことなのに。
どうしてできないの?
自分でも分からない。