獣は禁断の果実を蝕むのか。
「仕事をおろそかにするくらい、昨日は誰と楽しんだのですか?」
その言葉にハッとして。
慌てて、さっき専務が見た襟元を手で隠した。
…昨日の九重部長の。
まさか、痕がついていた!?
「九重部長とは、そんなんじゃなくて!!」
言いわけをしようとした言葉を急いで飲み込んだ。
名前…出したらいけなかったよね?
思わず出してしまったことに。
後悔してしまう。
だって、専務の顔は一瞬にして眉をゆがめながら。
まるで、裏切られたかのような顔をしているから。
「九重部長とは…それは、さぞ、楽しかったでしょうね?」
緩んだ口元とは裏腹に、拾い上げようとして止まったままの、私の持つ書類を強く踏みつけている。