獣は禁断の果実を蝕むのか。
「すっかり、ダマされた!!」
そう言いながら、プシュッと缶ビールのプルタブを開けると、ゴクゴクと喉を鳴らしながらビールを飲んだ。
「ダマされたって?」
ドスンッと音をさせながら、倒れ込むように勢いよくソファに座った皆瀬さんの顔を見た。
「私もね、常務に憧れる普通のOLだったの。」
懐かしむような顔を浮かべながら、小さくほほ笑んだ。
秘書が板についているから、てっきり秘書課かと思ったんだけど。
全然、普通のOLなんて見えない。
「皆瀬さんが、普通のOLって…キャピステールの何課にいたんですか?」
好奇心で、少しだけ、体が前のめりになってしまう。
「営業の事務よ。たまたま、営業会議で常務と会えることがあって…チャンスとばかりにアタックしたんだ。」
常務との話をする皆瀬さんの顔は、見たこともないような柔らかくかわいい顔をしていた。
憧れとかそんなんじゃなくて。
本当に常務が好きだったんだって。
私の心に流れ込むように伝わってきた。だけど、どこか切なそうに視線はうつむいている。