獣は禁断の果実を蝕むのか。


「それで、どうして今の状態に?」

「常務が言ったの、付き合うなら、自分の力になれる人がいいって。だから、S&Gの話をもらった時は、チャンスって思った。色々と情報交換して、常務と連絡取り合えて。それだけで嬉しかったの。」


「じゃあ、ダマされたって言うのは?」

「半年くらいしてからかな?常務から付き合おうって言われたの。それから7ヶ月して、キミとならいいパートナーになれるから結婚したいって言われた。それが…ここ最近、連絡が取りにくかったんだけど、まさか、どっかの女と結婚とは…」


フッと鼻で笑うと、手に持っていたビールを一気に飲みほした。


まさか、皆瀬さんと常務にそんなことがあったなんて。


かなりの衝撃だった。


「そんなことがあったんですね…」


何て言葉を掛けたらいいのか分からなくて。


ふと、顔をうつむけてしまった。


「常務も女好きで手が早いのは知ってたから。だから、デジウェアを手に入れたら、常務の心が絶対に私にしか向かなくなるって思ってた…ごめんね。」


そう言ってか細く笑った顔は、一気にビールを飲み干して、酔いが回ったからってワケじゃないと思う。


信頼していた大事な人に裏切られて、しかも、渡された薬が危ないものだったんだもん。


心はどこまでも落ちて行く。


…祐爾の時。


私もそうだったもん。


1800万の借金と横領って犯罪を背負った。


心の行き場がどこにあるか?


どこへ持って行ったらいいか分からなかった。
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