獣は禁断の果実を蝕むのか。

「ち…違います!!」


慌てて訂正して、腕を離してもらおうとおしのけた。


なのに、腕の力が入るばかりで


「泣いてんじゃねぇか!!強がる女が甘えるのは、男ならグッとくるもんだぜ?」


その言葉に、顔を思い浮かべてしまったのは専務。


もし…この腕が専務だったら。


きっと、甘えてしまったと思う。



思わず抱きつきたくなってしまったけど。


「ありません!!」


もう一度、ドンッと力いっぱいおしのけた。


離れた九重部長の体。


私の視線はそらしたまま。


九重部長と視線を合わせてしまったら、きっと、密室で想像できることをされてしまいそうだから。


なのに、そっと触れた九重部長の手の甲。


「泣くほど嬉しいことがあった顔じゃねえぞ。大事な女が泣いてんだ、そばにいたいと思うだろ?……梓悸じゃなきゃ、意味ねぇか。」


しゃがみ込みながら、私のそらした視線の中に優しくほほ笑む顔を映させた。


今の私に、これは反則だ。

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