獣は禁断の果実を蝕むのか。
まさか、九重部長のいつものエロとは違う一面を見せられて。
悲痛感で覆われた心が、陽だまりのような九重部長の温かさに。
心が揺れてしまいそうになる。
「……」
言葉が出てこない私に、大きな手の平をふわっと頭に乗せて
「寂しかったら、梓悸の部屋の前だ。いつでも歓迎するぜ?」
そう言いながら、クシャッと頭をなでた。
ポンと音がして、エレベーターのドアが開いて。
「オレと一晩過ごしたら、梓悸なんかどうでも良くなっちまうけどな。」
手を振りながら、笑ってエレベーターを降りて行った。
九重部長の笑顔を隠すように、エレベーターは静かに扉を閉じた。
ドンッと壁に寄りかかると、一気に足元から崩れ落ちた。
体を丸めながら、溢れる涙を止められなかった。