ふたつの背中を抱きしめた
何回も深呼吸をして
私は自宅のマンションのドアを開けた。
「…ただいま。」
その声に、明かりのついていたリビングから綜司さんがパッと廊下に出て来た。
「おかえりなさい、真陽。遅かったね、残業?お疲れさま。」
きっと、私の負担になるから口には出さないけれど、その顔には『心配したよ』と書いてある。
「ごはん出来てるよ、いつでも食べられるから。」
綜司さんはそう言って私の手から重くもない鞄を受け取りそれをリビングに運んでくれた。
本当に、綜司さんは優しいなぁ。
…どうして、この人だったんだろう。
もっと違う人だったら、私の気持ちも違ったのかな。
「…あのね、綜司さん。」
リビングのソファーに鞄を置く綜司さんに、私が声を掛ける。