ふたつの背中を抱きしめた


「寝ていた私にキスをしたのは本当です。
…でも、彼にそうさせたのは私が原因です。」


声が震えるのを抑えながら、必死にそう言った。



全てを、失う覚悟だった。


この関係が明るみに出れば、婚約者のいる私は自ら、それも未成年を相手に不貞を働いた事でここをクビになるかもしれない。


もちろん、綜司さんの耳にも入るし両家の親の知るところにもなる。

当然、柊くんとの関係も終わらせられるだろう。


それでも。

それでも、柊くん1人に罪を押し付けられなかった。


例え何もかも失い、万人に責められようとも。


それは私の罰だから甘んじて受ける。


ただ。


綜司さんの

柊くんの

哀しい顔を見なくてはならないのだけが、辛かった。


哀しい関係を作っておきながらムシのいい話ではあるけど


嘘でも誤魔化しでもいい。


2人には笑顔で居続けて欲しかった。


それだけが、とても辛い。



2人を泣かせちゃうな、きっと。

そう考えたら、ふっと緊張は解け自嘲の笑いが出た。


「申し訳ありません。私は正規スタッフでありながら、ボランティアで来所している未成年の柏原柊と自ら進んで不貞の関係を結びました。
この責任は全て私がとります。ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。」


私は躊躇なくそう言って園長に向かって深々と頭を下げた。


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