ふたつの背中を抱きしめた



園長は私が泣き止むのを待って1つの提案をした。


それは、背徳に輪をかける提案だった。



「責任者としては、間違っていると分かっているわ。」

そう言った園長に、私は目を見張った。

「でも、人は過ちを正せる。罪を償い道を歩み直せる。それが公にならなかったとしても。」

「でも、それじゃ…!」


「それが、1番みんなが傷付かない方法よ。貴女も、貴女の婚約者も、そして柊くんも。」


園長の言葉に、私は反論出来なかった。



園長は言った、

『柊くんの言葉を真実にしなさい』、と-----


「貴女と柊くんはただの仲の良い仕事仲間よ。そして、柊くんは気紛れで仲の良い貴女に悪戯しただけ。
貴女は、何も知らなかった。柊くんは冗談のつもりだった。
ただ、それだけの事。」


その偽りで固められた提案に私は反対した。けれど

「不貞が明るみに出たら1番制裁を受けるのは柊くんよ。
もし婚約破棄になったら、貴女には帰る実家や頼れる家族があっても、何も無い柊くんは1人でその賠償を背負わなければならないわ。」

その話に、私は言葉を詰まらせた。


「柊くん1人に押し付けたくないのは分かるけれど、でも結局それが1番彼が救われる方法よ。」

そして、園長は言った。



「柊くんの言葉を真実にするために…貴女たちの関係は清算しなさい。」



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