ふたつの背中を抱きしめた
外はすっかり夜になって空には月が浮かぶ。
時計の針は21時を指そうとしていた。
「甘いね。」
私は柊くんが出してくれた採りたてのミニトマトをひとつ口に入れて言った。
「美味いだろ?」
柊くんがミニテーブルに頬杖を付きながら、ニヤッと得意げな顔をする。
その顔が可愛くてもっと眺めていたいけれど…
柊くんは暑いからと言って上半身裸のままだったので私は目のやり場に困ってキョロキョロと目を泳がせた。
「今度は違うもの育てよっかなあ。真陽は何がいいと思う?」
「その前に柊くん服着なよー…」
私は向かいに座る柊くんから目を逸らしながら言った。
「なんで?暑いから風邪ひかないよ?」
「そうじゃなくって、目のやり場に困る。」
「は!?いまさらっ!?」
目を丸くする柊くんの言葉に私は顔を赤らめる。
「さっきまで裸でくっついてたクセに…」
「そーいうコト言わないでよー!!ソレとコレとは別なの!」
私はもう恥ずかしすぎて柊くんの方を向けなくなった。
「はいはい、分かりましたよっ、と。」
そう言いながら柊くんは布団の上に脱ぎ捨てていた自分のTシャツを手にし、私に背を向けて着始めた。
その素肌の背中が一瞬視界に入って、私は目を奪われる。
「…柊くんて、結構筋肉あるよね…」
普段、服を着ているときには分からない柊くんの逞しさに、私は無意識のまま感想をこぼした。