ふたつの背中を抱きしめた



それは、大学3年の秋に早々に就職の内定をもらった日の夜だったと云う。


こんな早く、しかも一流企業の就職が決まったと云うのに

ご両親の反応は冷たかった。


浅葉家は代々続く地元の名士だ。

普通、そういった家を継ぐ者は地元に密着した仕事を選ぶことが多い。

公務員であったりあるいは開業医や弁護士事務所等開いて地域の貢献に役立てる。

特に義祖父様、義父様ともに区議員をされてる浅葉家にとって、一流とは言えなんの縁もない一般企業に就職を決めた綜司さんの選択は喜ばしいものではなかった。



「…お前を信頼して選択を任せたが、まさかここまで愚かだったとはな。」




努力して努力して努力して。


誰もが羨むような未来を掴んだはずだった。


文句の付けようがない就職を決めたはずだった。


ようやく、ゴールだと思った。


やっと、これでやっと、誉めてもらえるって…。





「お前には期待はずれだったな。」



それは

綜司さんの21年間を否定する一言だった。




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