ふたつの背中を抱きしめた
「今日は家で婚約者が待ってるの。だから柊くんの所には寄れない、ごめんね。」
私がそう告げると柊くんは唇を尖らせ、あからさまに不機嫌な顔になった。
「なんだよ、婚約者ばっか構って!俺のコトはどうでもいいのかよ!」
不安になればなるほど強くなる独占欲。
言葉を飾らない柊くんのそれはまるっきり子供の駄々だ。
だから私は、小さい子に諭すように優しく答える。
「どうでも良くないよ。柊くんのコトとっても大事だよ。でも今日は、ね。帰らなくちゃいけないの。お願い、分かって?」
大人のキスを与えながら。
まだ、人がちらほら通る夜の遊歩道で唇を重ねてきた私に
柊くんは顔を赤く染めて驚いた。
「…っ…」
唇を離した柊くんは赤くなった顔を伏せながら上目遣いで睨んできた。
「…なんだよ、子供扱いすんなよ…。」
そんな柊くんに私はゆったりと微笑む。
「子供扱いなんてしてないよ、柊。」
そう言った私に彼が大きく目を開く。
「…なんだよ、それ…。…いきなり反則…」
真っ赤に染まっていく顔を隠すように柊は手で口元を押さえた。
「イヤ?」
聞いた私に柊は
「…全然、イヤじゃない…」
と素直に答えた。