ふたつの背中を抱きしめた




「…どんくさ、は無いでしょ!どんくさ、は!」

私はスタッフルームの自分に与えられた机で、遊戯部屋に飾る桜の花を色紙で作っていた。

周囲に誰もいない事を確認して、さっき受けた侮辱を独り言にしてぶちまける。

園長は柊くんを「感情が上手く出せないだけ」って言ってたけど、そーゆー問題じゃ無い気がする!


せっかくフレッシュな気持ちで迎えた社会人初日に手痛い歓迎の言葉を受けた私は
どうにもやるせない気持ちを鋏にぶつけながらひたすら色紙をジャキジャキと切り進めた。


「櫻井さーん、色紙足りてる?」

可愛らしい声で私に呼び掛けながらスタッフルームに1人の女性が入ってきた。

「あ、はい。大丈夫です。」

「そう?でも一応ピンク色だけ置いていくね。」

そう言って、その人は胸に抱えた色紙の束から数枚のピンクの紙を抜いて机に置いた。

三島 リエ(みしま りえ)さん。

短大で資格を取り昨年ここの正規スタッフになった彼女は、21歳で私より1個年下だがスタッフとしては1年先輩だ。

スタッフの中でも私と1番歳の近い彼女に親近感を覚え
友達になれるといいな、と私は密かに思っていた。


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