ふたつの背中を抱きしめた
「櫻井さん、もしかしてさっき柊くんに何か言われた?」
リエさんに唐突に図星をつかれて、私は目を見開いて驚いた。
「えっ!?どうしてですか?」
「なんか怒りながら色紙切ってるみたいだったから。」
…げっ。見られてた。
誰も見てないと思って晒していた醜態をしっかりと見られていた私は気まずさから苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。
「柊くん、失礼なコト平気で言うからプンプンしてるスタッフやボランティアさん結構いるんだよね。」
リエさんは困ったように笑いながら私の隣の椅子に腰掛けた。
「園長以外のスタッフの言うことはあんまり聞かないしね。結構みんな手焼いてるんだ。」
「そうなんですか…。」
私は柊くんの想像以上のひねくれっぷりに、怒りを通り越してなんだか心配になってきた。
「…でも…、さっき、私の背じゃ届かない所のボールを代わりに取ってくれたんです。
園長の言うとおり、…きっと悪い子じゃないと思うんです。」
気が付くと、私は何故だか柊くんをフォローしていた。
だって。
確かに「どんくさ」は酷いけど、
でもでも。
ボールを取ってくれたのは本当だし。
それで、あの女の子を笑顔にしたのは
紛れもなく、柊くんだ。
「…彼は、やり方は不器用だけど、でも、ちゃんと子供を笑顔にしてあげられる人だと思います。」
その時の私は
桜の花弁に塗れて私を見つめていた
力強い瞳を持った彼の姿を思い出していた。
「…今日初めて会った割に、随分彼を分かっているのね。」
リエさんの言葉に、私はハッと我に返った。
「えっ、いや、その!何となくそう思っただけです!」
確かに、今日会ったばかりなのに、何を私は偉そうに言ってるんだろう。
慌ててわちゃわちゃと手を振る私に、リエさんは
「私もね、そう思うわ。柊くん本当はいい子よね。」
ニッコリ笑いかけてそう言った。