ふたつの背中を抱きしめた



「…私、生意気なコト言って、リエさん気悪くしちゃったかな。」

夕陽の射し込むロッカールームで私は今日一日のコトを振り返りポツリと呟いた。

18時、出勤初日の業務が終わり私はひとり帰り支度をしている。

今日この時間にあがる正規スタッフは私しかいない。


ここでは、定時的な勤務時間というものが存在しない。

ぬくもり園では基本的に短期で子供を預かる為、入れ替わりが激しく人数の変動も大きい。

預かる子供が全くいない時もあれば満員の10人を抱える日もある。

3歳から15歳までの子供を預かるので生活リズムの幅も広い。

就学児のみならば平日の昼間は学校に行ってるからスタッフは手薄で済んだりもするし
子供を預かっている時には当然夜勤もある。

つまりその時々の子供の生活に合わせて勤務時間が決まるワケだ。


今日は、出勤初日と言うことで無難に帰れる時間を園長が計らってくれた。

皆に挨拶をしてからロッカーで着替えを済ませた私は、最後に大切にしまっておいた指輪を薬指に嵌めた。

もちろん、綜司さんからもらった婚約指輪だ。

時に小さい子供もいる職場なので勤務中はアクセサリーの装着は禁止されている。

それでもやっぱり綜司さんの婚約者である印を着けていたくて、私は通勤の時だけでも指輪を着けるようにした。


< 28 / 324 >

この作品をシェア

pagetop