ふたつの背中を抱きしめた
通勤の相棒であるシルバーの自転車を押しながら園門を出ると、デニム地のリュックを背負った柊くんと鉢合わせた。
「柊くんも今帰り?お疲れさま。」
そう声をかけた私をチラリと見て、柊くんは今度は頭を下げるコトも無くさっさと歩いて行ってしまった。
…やっぱりこの子のひねくれっぷりは相当だわ。
けれど何故だか、私はそんな柊くんに腹が立つコトは無かった。
自転車を押しながら小走りで駆け寄り柊くんの隣に並ぶ。
「柊くん偉いね。ボランティアなのに朝からこんな時間までいてくれて。スタッフも助かるよ、ありがとう。」
一生懸命話し掛ける私を、柊くんは再びチラリと横目で見てから視線を正面に戻し独り言のように呟いた。
「…ウソだ。」
「え?」
「俺のコト、やっかいだとか手が掛かるだとか思ってるくせに。」
柊くんのその言葉に、私はリエさんの話を思い出してドキリとした。
---柊くん、知ってるんだ…。
自分がそんな風に言われてるコト…。
その事実が、どうしようもなく哀しくなって
私は慌てて否定をした。
「やっかいなワケないじゃん!柊くんは、今日私を助けてくれたじゃん!子供にもいっぱい好かれてるじゃん!確かに愛想は無いけど、ぬくもり園に必要な人だよ!」
そう言った私を
柊くんはキョトンとした顔でみつめた。
-------あ…。
もしかして、またやってしまった…?
久々に出た私のズレた力説。
柊くんの表情が驚きから『なんだコイツ』と云う顔に変わっていく。
後悔をするより早く私は
「バカじゃねーの。」
と言う柊くんの言葉を浴びせられ、その場に立ち尽くしてしまった。
そんな私を振り返る事もなく、柊くんは夕焼けの街を1人歩いて行ってしまった。