ふたつの背中を抱きしめた
沸騰直前のやかんの湯で丁寧にカップと急須を温める様を、俺は隣に立って見ていた。
「最初に器を温めておくといいんだよ。」
そう言った彼女の湯気に霞む横顔を、俺は黙って眺めていた。
温まった急須に茶葉を淹れ湯を注ぐと、途端にフワッと華の香りが広がった。
心地好いその香りに思わず呟く。
「…いい匂い。」
その言葉を聞いて真陽は目を細めてとても柔らかい笑顔をした。
「これはカモミールのお茶なんだけど、緊張を和らげて身体を温めてくれる効果があるの。匂いだけでもなんだかホッとするよね。」
カモミールの柔らかい香りと真陽の柔らかい声が重なりあって
俺はなんだか泣きたいくらい温かい気持ちになっていた。