ふたつの背中を抱きしめた



柊くんに最初に会った時、1番印象に残ったのは彼の瞳だった。

冷たくて、でもとても強くて、そして深い黒を宿した瞳。


今なら分かる。


その瞳は、孤独と生への渇望に染められたんだと。

そこに優しさなんて、温もりなんて、あるはずが無い。

だって、誰が彼に温もりを教えたと言うの?

誰が彼に愛を与えたと言うの?


知らないものを、与えられなかったものを、持っているワケがないじゃない。


柊くんは笑わない。

柊くんは、自分が幸せになる術も
他人を幸せにする術も

何も知らない。何も知らないのよ。

だから彼は、笑う意味すらも知らない。


柊くん。


柊くん…!



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