ふたつの背中を抱きしめた
傘を持っていないと言う柊くんを、私は自分の傘に入れてあげた。
思いの外、雨が強くなっていたコトと
柊くんとひとつの傘で帰らなければいけなくなったコトで
私は出勤に乗ってきた愛用の自転車をあきらめて園に置いて帰る事にした。
あまり大きくは無いひとつの傘に、柊くんと2人で肩が触れないように気を付けながら身を縮こまらせて歩く。
激しく降りつける雨の音。
水飛沫を上げて走る車の音。
あまり心地好くは無い音が、無言の私達を取り囲む。
一緒の傘に入りながら水溜まりを避けて歩くコトは難しく、私は途中から足下がズブズブに濡れるのをあきらめた。
ちゃぽちゃぽと、水を滴らせた足音をたてながら歩いていると
柊くんがつぐんでいた口をやっと開いた。
「…怒ってる…?」
…なんか、前もそうやって聞かれた気がする。
私は黙って首を横に振った。
「なんで、怒んないの?」
柊くんは、まっすぐ前を見ているふりをしながらもチラチラと不安そうに横目で私を見ていた。
だって、怒ったりしたら
せっかく戻ってきた猫が、また逃げ出してしまう。
今度こそ、もう二度と、姿を見せなくなってしまう。
私は、ただ黙って首を横に振った。