幕末オオカミ
総司の牙が、目前に近づく。
あたしは渾身の力で、そのあごを両手で支えた。
いつもの狼化とは、明らかに違う。
その口からは血がしたたり、生臭い匂いがした。
子孫を残そうとするのではなく、
自分に向かってくるものは、全て敵とみなす。
そんな手負いの獣、そのものに総司は変わってしまっていた。
「総司っ、総司ぃ……っ!!」
呼んでも呼んでも、返事はない。
だって、狼には名前など、ないのだから。
手がしびれ、もうダメかと思ったとき。
ふと、総司の身体が離れていった。
「……?」
もしかして、正気に戻ってくれたのだろうか。
そう思った瞬間、胸元に生暖かいものがボタボタと音を立てて降ってきた。