鬼の花嫁 ‐巡る季節‐






鬼の当主である風神さんは

仕事が多くていつも遅くに就寝し、

あたしより随分早くに起きる。




…だから、

風神さんの寝顔を見るのは初めて。





「寝ないとだめですよ」って注意するけど、

風神さんはどこ吹く風の如く

「鬼は人間と違って平気だ」なんて言って

あんまり休んでくれやしない。





しかし……




「可愛いなぁ…」





伏せられた瞼から伸びる睫毛は

真っ直ぐで長く、

艶のある毛穴のない綺麗な肌は

肌触りも心地よい。


少し開いた形の良い唇からは

微かに寝息が聞こえ、

枕を抱きしめて眠る姿は

可愛いとしか言いようがない。




頬をつんつんっと突いてみると

風神さんがパチッと目を覚ました。






< 55 / 61 >

この作品をシェア

pagetop