フクロウの声
「鳥羽伏見でな、
 仲村はずっと一番前で戦って来たんだ。
 誰のためだと思う?
 総司、おまえだよ。
 あいつは戦いたくても戦えねえ
 おまえのために戦って来たんだろうが!」

「そんなこと、わかってますよ。」
 
沖田はひゅうひゅうといやな呼吸のまま、
かすれた声を張り上げて言い返した。

「新八さんだって、知っているでしょう。
 マオリは女人なんだ。
 新八さんはどこまでマオリを連れて行く気ですか。
 私の代わりに、死ぬまで刀振り回させる気ですか!」

「おい、総司やめろ。」
 
今度は永倉の胸倉を掴む沖田を土方が制止しに入った。
沖田の言葉に永倉は一歩引く。

「おい、あれ!」
 
原田が港の異変に気づいた。


マオリに気づいた西軍の兵が近づいてきた。

「おぬし、その白い刀、新撰組の仲村だな。」
 
マオリはまだ、
少しずつ遠くなっていく船を見つめて
膝をついたまま呆然としている。
仕方なく、おれは久々にマオリの体の奥深くへ潜った。
 
しっかりしろ、マオリ!
 
おれは刀に手をかける。

「捕らえろ!殺された仲間の恨み!」
 
一人が斬りかかってきた。
黒い洋装のものたちが次々とやって来る。
 
八双に構えられた刀が奇声と共に襲い掛かってくる。

だらりと垂れたマオリの腕に瞬時におれの力が入って、剣閃が走った。
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