フクロウの声
「大丈夫。」
 
沖田はマオリの手をとった。

ひどく冷たい。
その感触にマオリは驚いた。
これで血が通っているのだろうかと思うほど。
 
沖田は柱に掴まりながら立ち上がった。

「行かなくちゃ。」
 
沖田はふらつきながら座敷へ向かって歩き始めた。
障子に手をかけて振り向く。

「また会おう。マオリ。」
 
そう言ってあの笑みを投げかけた。
薄く冷たい影を帯びた笑み。
 
マオリは閉じられていく障子の向こうで沖田を迎え入れる
温かい声がするのを聞いた。

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