フクロウの声
「人を殺すことは怖くないんですか?」
マオリは一歩近づいて柱に触れた。
乾いた柱がひんやりと冷たい。
「おかしなことを聞く。」
闇を所在げなく見つめたまま沖田が言う。
「すみません。」
「君は?」
沖田はマオリに顔を向けた。
凛々しい青年の面影が障子からこぼれる明かりに照らされる。
目を離し、目が合うたびにまったく違う人物のように感じる。
「私は・・・あまり、何も。」
自分の問いかけをそのまま返されたマオリは口ごもった。
「じゃあ、なんで人を殺すことが怖いかなんて聞くの。」
「それは、あなたがあまりにも迷いなく刀を振るっていたように、
あの夜見えたから。」
やっと言葉を紡ぎだしたマオリを、
沖田はふっと薄く笑った。
「そうだね・・・、少しは可哀相だなあと思うよ。
でも、数を重ねすぎて忘れてしまった。
それよりも私は・・・あの人たちが大事でね。」
そう言った沖田は楽しそうな声が漏れる座敷のほうを見やった。
マオリもつられて同じほうを見る。
沖田はまた咳き込んだ。
あの夜と同じ、喉の奥の蜘蛛の巣がからみあうような嫌な咳。
マオリは駆け寄って沖田の背をさすった。
思ったより背骨が浮き出ているのが手のひらの感触でわかる。
あれほどの剣の使い手にしては痩せすぎている。
マオリは一歩近づいて柱に触れた。
乾いた柱がひんやりと冷たい。
「おかしなことを聞く。」
闇を所在げなく見つめたまま沖田が言う。
「すみません。」
「君は?」
沖田はマオリに顔を向けた。
凛々しい青年の面影が障子からこぼれる明かりに照らされる。
目を離し、目が合うたびにまったく違う人物のように感じる。
「私は・・・あまり、何も。」
自分の問いかけをそのまま返されたマオリは口ごもった。
「じゃあ、なんで人を殺すことが怖いかなんて聞くの。」
「それは、あなたがあまりにも迷いなく刀を振るっていたように、
あの夜見えたから。」
やっと言葉を紡ぎだしたマオリを、
沖田はふっと薄く笑った。
「そうだね・・・、少しは可哀相だなあと思うよ。
でも、数を重ねすぎて忘れてしまった。
それよりも私は・・・あの人たちが大事でね。」
そう言った沖田は楽しそうな声が漏れる座敷のほうを見やった。
マオリもつられて同じほうを見る。
沖田はまた咳き込んだ。
あの夜と同じ、喉の奥の蜘蛛の巣がからみあうような嫌な咳。
マオリは駆け寄って沖田の背をさすった。
思ったより背骨が浮き出ているのが手のひらの感触でわかる。
あれほどの剣の使い手にしては痩せすぎている。