恋猫
 
 「あ- ――ッ!」



 篠は自分目掛けて猛然と一匹の猫が突進して来たので、仰け反って驚いた。



 ガチャン。



 ビチャ―――ッ!



 勢い余って美化の足が、湯呑に引っ掛かり湯飲みの蓋が吹っ飛んだ。
 篠の前に置かれた湯飲みは倒れて転がり、中のお茶が、篠の着物と帯に噴きかかった。


 「あれっ!!」


 篠は正座のまま慌てて後ろに下がり、小さめの手拭いで着物のお茶を拭った。そして、帯の間に入れていた扇子を取り出した。


 篠は緊張すると、じわっと汗が吹き出る体質だった。それ故、緊張しても涼しい顔をしていられるよう、篠はこっそり扇子を忍ばせていたのだった。





 
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