恋猫


 「猫じゃあるまいし。仮にも武家ですから。幾らなんでも、この姿では。普通に顔と顔、見詰め合って抱き合えば、お宜しいかと。篠さま、早く着物を元に戻して立ち上がって下さいませ」


 淳ノ介が弱り果てた顔で篠に呟いた。


 「この姿では、駄目。そうでございますか」


 篠も困り果てていた。


 (どうして駄目なんだ)


 (猫ならいとも簡単な事が、人間の世界はこうも堅苦しいのか。これじゃ、子孫繁栄の楽しい筈の秘め事も肩が凝ってしょうがねえ。あ~、やだ。やだ。と、言ってここで投げ出せば、今までの苦労が水の泡。何か、いい知恵は?)


 (あっそうだ。女将さんに着付けを頼むという手があった。これだ。これしか無い)



 篠は、思案顔。
 淳ノ介は、もう白け顔。






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